カウンターのまえには、いつのまにか行列ができていた。
先頭の男は、なにやら早口で店のおばさんに注文をつけていた。一言二言ですむような用件ではないのか、山盛りのプレートランチをはさんで、えんえんと話はつきないようだった。早口の英語でまくしたてるので、なにがどうなっているのか、わたしにはさっぱり理解できなかった。ふたりとも、うしろにならんだ10人ばかりの客のことなど、路傍の石のように黙殺していた。10分以上もたったろうか、ついに男は納得したようすで、プレートを片手にカウンターを離れた。
ようやく、わたしの番になった。おばさんに「アイスクリームを三つ、バニラとストロベリーとマウイ・サンセットってやつね」と注文した。おばさんはふむふむとうなづきながら、それを伝票代わりのメモ用紙に鉛筆で書きつけると、なにやら調理場のなかを忙しそうに右往左往していた。しばらくして、ふたたびカウンターにやってきた。わたしのほうをむいて、言った。「それで、ご注文は?」
「もうしたよ。アイスクリーム三つ」と、見かけによらずひとのいいわたしは、うんざりした気持ちをサングラスの下に押し隠して言った。おばさんは、さすがに気が引けたのか、あわててステンレスのアイスクリーム缶をあけようとして、蓋を下に落としてしまった。盛大な音がした。
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