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マウイ──2000/09
 
1──アイスクリーム
2──ハナの南へ

3 ──キパフルの虹

     

3キパフルの虹

 

 Uターンして、先ほどの教会のところまで来た。目の前に、大きな虹が半弧を描いていた。小さな湾になったところに、陸地に発して、海に没するまで、その姿形がはっきりと見てとることができた。びっくりするくらい太い虹で、七色の違いがよくわかった。


キパフルの虹
   

 写真を撮っていると、対向車線にマイクロバスがやってきた。車腹に、"Polynecian Adventure Tours" と書いてある。キヘイやラハイナを早朝に出発して、ハナ近辺をまわる日帰りツアー客を乗せているのだ。
 マイクロバスが停まり、大勢のツアー客が降りてきたので、われわれはトーラスに引き返して先へ進むことにした。《なな》と《みの》のチャイルド・シートのベルトを留めてやって振り返ると、さっきのマイクロバスがやってきた。バスはトーラスの横で停まった。運転席のウインドウがあき、よく肥った白人女性ドライバーが、「あれはごらんになった?」と親切にもわたしに声をかけてくれた。けれどもそのとき、わたしの貧弱な英語力は、"seen it?" の部分を "seal" と聞いた。
 さすがに、虹のことをいっているのだろうなとはおもった。だが「くまのプーさん」ではないけれども、一度頭のなかに居座ってしまったアザラシは、すぐには消え去らなかった。けっきょく「ええ、まあ」ぐらいの間の抜けた返事しかできなかった。

 走りはじめたトーラスのなかで、《あ》が「あんなに大きな虹を見たのは、生まれて初めて」というと、《みの》は「ぼくは、子どもだけど、見た」と得意そうにいった。
 しばらすると、行く手にもうひとつ、虹がかかっているのが見えた。先ほどのに負けず劣らず立派な虹だった。そこは、牧場のようなたたずまいをした、海へむかって急激に下降している丘の上だった。地図をみると、キパフルの村に近いらしい。虹は、緑の丘の上から、大きな半弧をくっきり描いて、やはり海に落ち込んでいた。その虹のうえに、やや曖昧だが、もうひとつ虹が覆いかぶさるようにして、かかっていた。いつまでも見ていたいような、すてきな虹だった。

 

虹のみえた丘から、虹の反対側をふり返ると、逆行に輝くマウイ島南部の海岸線がみえた。  
     「きょう、こんなすごい虹を、しかも三つもみた子どもは」と《みの》は胸を張っていった。「世界じゅうで、ぼくと《なな》だけかなあ?」
 「きっとそうだよ」親たちは笑いをこらえて答えた。
    終わり

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