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マウイのハセガワさん
マウイ島──2000/09
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 マウイ島北東の町ハナへは、ハナ・ハイウェイという美しい愛称をもつ道を走ること2時間の行程だ。どのガイドブックにも「ロング・アンド・ワインディング・ロード」として紹介されているこの道は、「予習用」の案内ビデオが売られ、じぶんで運転するのが怖いひとのためのツアーが頻発している始末で、アメリカ人にとっては難所らしい。だが日本の山道を走り慣れた身ならば、なんということもない快適なドライブが愉しめる。時差の関係もあるのだろう、パイアの町をすぎたあたりで、子どもたちは眠ってしまった。雨が降りはじめた。ハナに着き、日が暮れても、雨は降りつづけた。
 ハナとはハワイ語で「仕事」という意味。1時間もあれば中心部をすっかり歩いて見てまわれるほど小さな町だ。翌朝はまだ小雨が残っていた。雨のあいだをぬって、子どもをつれて町なかへ散歩にでた。家々は海にむかって建てられていた。どの家も、だいたい似通った形をしていた。木造が多く、高床式にすこし浮かしてあって、屋根の勾配はゆるく抑えられている。窓は下部がルーバーになっていて、そこを開けておけば、いつも風を家のなかに呼び込むことができるような造りだった。庭先に南国ふうの花が咲いている。バナナの実がぶらさがっている。日本人には、むしろ「花」とか「華」を連想させる雰囲気である(片岡義男氏に「ハナのハナ」という題名の小説がある)。マウイ島の北東に位置するこの町は、北太平洋をわたってくる吹き寄せる貿易風をまともにうける土地だ。年間降雨量は町中で89インチ、すこし山へ入れば200-300インチにもなる。木々が鬱蒼と茂り、しっとりと濡れそぼっている。
 『地球』にもLPにも、町を見下ろす丘に登るといい、と書いてあった。大きな黒い十字架(Fagan Memorial)のたつ丘はすぐにわかった。斜面にたくさんの牛がいて、草をはんでいた。ホテル・ハナ・マウイの向かいに入口らしきゲートがあった。だが錠で固く閉じられている。フロントで訊ねると、いまは入場不可ということだった。




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