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散歩旅のもくじ


メキシコ──1999/09-10
 
1──カンクンは嵐だった
2──桟橋の蝙蝠傘
3──イスラ・ムヘーレス上陸
4──おぼれかけた島で

     

3イスラ・ムヘーレス上陸

 

   イスラ・ムヘーレス (Isla Mujeres) とはスペイン語で「女人の島」という意味らしい。日本流にいえば「女護が島」だ(喩えが古すぎるか)。南北に8km、東西は広いところで1km。カリブ海に浮かんだ棒切れのような島である。
 子どもの手を引きながら桟橋から5分も歩くと、もう島を横切り、反対側にでてしまった。カリブ海のむこうから、ものすごい東風が吹きわたってくる。そこに建っていたのが、Hotel Perla del Caribe だった。少年のような雰囲気を残した男が近寄ってきた。ホテルの受付係のようだった。わたしが、部屋はあるかと訊ねると、ツインで一泊N$405だという。三泊するというと、一泊あたりN$305にしてくれた。

Hotel Perla del Caribe。海側からの眺め。後日、晴れた日に撮った。こうしてみると、なかなか立派である。が、本文でも書いたように、部屋に入ってまでもその感想が揺らがないかどうかは、むずかしいところだろう。アメリカ本土からの団体客がやってきた日もあった。われわれは3泊して別のホテルに移った。念のためにつけくわえれば、個人的には、そう悪いホテルだとはおもわない。
  建物の手前には瓢箪型のプールがある。海の行き帰りにここで泳いだが、水はけっこう冷たく、しばらく浸かっていると、唇が紫色になってしまうほどだった。
   初めに案内された2階の部屋は、一見するとまずまずの造りだった。ところが、よく調べてみると、電気が来ていないうえに、ドアロックが壊れていた。建物をでて通りの向かい側にあるレセプションに行き、さっきの男にそのことを訴えた。男は、おっかしいなあ、という調子で部屋のあちこちを調べていたが、事態は改善されなかった。けっきょく、部屋を代えてくれ、というわたしの申し出に応じてくれた。
 このホテルの売りは、オーシャンヴューだ。たしかにすべての部屋が南西のカリブ海に面していた。だが、あいにく今日は、その方角から猛烈な風が吹きつけている。ベランダに面した全面開放型の窓は建て付けが悪いのだろう、サッシと床との隙間から雨水が浸みてきていた。またしてもレセプションへ行き、事情を説明すると、男は使い古しのバスタオルを何枚もかかえて部屋へあがってきた。こちらも、いまから代わりのホテルを探すのも面倒だし、男はいちおうそれなりに親切なので、ともかくバスタオルを雑巾代わりに窓枠にそってならべることにした。床はタイル貼りだから、階下へ漏れる心配はない代わりに、ひんやりして、なんとなく濡れているように感じる。  
 


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