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散歩旅のもくじ


東北キャンプで散歩旅
陸中山田から下北半島へ

2002/08
 
  1──雨の陸中海岸を行く
2──博物館でマッコウクジラを見る
3──ステッピーで車中泊
4──オランダ島へわたる
5──雨の下北、恐山めぐり
6──夫婦かっぱの湯、尻屋崎、大間崎
7──帰り道


ルートマップ

     
4
オランダ島へわたる
 



 ようやく青空が戻ってきた。キャンプ場に朝日が照りつけている。キャンプ4日目にして初めてテントが張れそうだ。

 《みの》はさっそく持参の捕虫網を振り回しはじめた。
 特段に虫採りに長けているわけではない。ほとんどやみくもに振り回しているだけだ。それでもときどき、《みの》のなまくら捕虫網に捕まってくれる蝶やトンボもいる。《みの》はよろこんで、つまんでもってきてくれる。ほめると、いたく自慢げである。われわれや《なな》にひととおり見せると、惜しげもなく放してやる。



 オランダ島へわたる船は、山田港のはじっこの桟橋からでるという。ビーチパラソルの下のテーブルで、おじさんが切符売りをしていた。



 島への連絡船は、うんとかわいらしい。定員は約80名くらいだが、実際のところ50人も乗れば一杯になるだろう。メキシコで乗った連絡船をおもいだす。

 「「野田」ナンバーって千葉ですか?」
 乗りあわせた青年に声をかけられる。つづけてかれは、
 「帰省ですか?」
と訊ねた。
 たんなる旅行ですという意味のことを、わたしが答えた。
「そうなんですか。じぶんも名前がノダというもので」



 牡蠣筏のあいだを10分ほど航行すると、オランダ島へ着いた。山田湾に浮く小さな島だ。正式には大島というらしく、夏のあいだだけ海水浴場となる無人島のようだが、『シマダス』にも載っていない。形はちょうどボウルを伏せたよう。そのてっぺんへ向かって、さしあたりわれわれは木々のあいだを登っていくことにした。頂上には鳥居があった。島の裏側へ下るつもりだったが、道を間違えた。けっきょく船着き場からいくらも離れていない砂浜へでた。



 ビーチ、といっても三陸の島だ。八重山あたりのそれとはだいぶ雰囲気を異にしている。海は青いというより緑がかっていた。海藻の類がやたらに繁茂しているせいか、透明度も高くない。海に入ると、心臓がとまるかとおもうくらい冷たい。若いころ北海道で無謀にも10月に海に入ったときのことをおもいだした。でも、まだ8月なのだ。

 《なな》はさすがに寒いといって、ひとりで海に入ろうとはしない。一緒に砂浜を歩いて、形の変わった貝殻を見つけて歩くことにした。

 持参の浮き輪をふくらまそうとしたが、空気入れの口金の形状があわず、うまくふくらまない。しばらくわたしの口にくわえて自力封入を試みたが、苦しいばかりで一向に成果があがらなかった。水は冷たいし、まああまり海に入らなくてもいいか、といって勝手に諦めることにした。



 《みの》はいつものごとく、砂浜で穴をほったり土手を構築したりしていた。《くんくん》はお昼寝である。

 午後になると、みるみる雲が増え、青空はすっかり見えなくなった。時折、雨粒が落ちてくる。1430の船で島をあとにすることにした。

     

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