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散歩旅のもくじ


2001年3月17-19日
 
  1──雨の博多港
2──平山旅館
3──遺跡を見に行く
4──島の路線バス
5──港の見える公園

     
5 港の見える公園
 



 平山旅館がたつ丘の中腹を登り詰めると、馬の背状の痩せ尾根にでた。

 国民宿舎が建っていて、傍らに小さな公園がある。ほんとに小さい。われわれの泊まっている部屋よりも狭いくらいだ。地図で見ると、いちおう湯の山公園という名前がつけられている。

 動物の恰好をした遊具もおいてあったが、あまりつかわれてはいないようだ。動物園の鳥類舎をうんと小型にしたような鳥かごがあり、キジや七面鳥などの鳥類が飼われている。ひとの姿を見ると、ギャーギャーと鳴いて羽根を広げてみせる。

 眼下には、湯本の港が静かなたたずまいを見せていた。

 反対側を見ると、平山旅館のある集落が、谷にへばりつくようにあった。

   



 この小公園の直下から港に向かっての崖地に、なぜだか巨大な滑り台がつくられていた。滑面はローラー。《みの》は喜んで、滑り降りてはまた登ってきて、飽きずに何度も滑る。《なな》は興味があるものの怖がっていた。わたしがだいて滑ってやると、もっと怖くなってしまった。そのあといくら誘っても、けっして滑ろうとはしなかった。

 公園の下、港のすぐ近くには、鹿が飼われていた。

   
   


 海の水はきれいである。

 港の見えるこの公園には、到着した日の夕方、中日の夕方と足を運んだ。みんなすっかり気に入ってしまったのだ。
 《みの》は「ぞうさんとかいるこうえんにいきたい」といって、帰らなければならない日の朝も、朝食後に4人で登った。

 《みの》は何度も滑り台で遊んだ。すっかりポカポカと温かくなって、上着を脱いでしまった。未明に出漁した漁船が、タンタンタンタンとエンジン音を響かせて港に帰ってきた。

 芦辺港まで平山旅館のクルマで送ってもらうことになった。クルマが旅館をでる間際、まだ20代前半とおもわれる旅館の息子さん(三男らしい)が、「こんどは一緒に釣りに行こう」と《みの》に声をかけてくれた。《みの》はうれしそうに、「こんどはナツヤスミだあ」といった。

 そうだ、保育園そだちの《みの》は、「夏休み」なるものを知らないのだった。1歳のときから通った保育園は、あと1週間で卒園になる。4月になれば小学校にあがる。春がすぎて夏が来れば、かれは生まれて初めての「夏休み」を経験することになるだろう。

──おしまい
     

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