註:このページは旧サイト「子づれ散歩旅の絵本」(2004年にいったん閉鎖)のものです。現在は「さんぽのしっぽ」の一部として組み込まれています。アーカイヴを目的に復活させたため、その後のアップデートはおこなっておりません。当時のサイトURLは現在は有効ではなく、一部にリンク切れもあります。どうかご了承ください。
さんぽのしっぽホーム ▼子づれ散歩旅・旧サイトアーカイヴのトップ
Top
散歩旅のもくじ


自然と人工、そしてハレアカラ
マウイ──2000/09

 
1 ──ハレアカラ・ハイウェイ
2 ──山頂からの眺め
3 ──標高10000フィートのチャント
4──女神ペレと英雄マウイ
5──星々にいちばん近い場所
6 ──ハレアカラの両義性
7──自然と文化の「進化」の舞台

     
2山頂からの眺め  
     

 

 

   トーラスのドアを開けると、ここがハワイであるとは信じられぬほどの冷気が流れ込んできた。駐車場の端のブロックに腰かけて、前日、キヘイのフードランドで仕入れたベーグルにクリームチーズを塗って、簡単な朝食をとった [*]。
[*] フードランドは24時間営業のスーパーマーケット。各所にチェーン展開している。キヘイでは、Kalama Parkの向かいにあるキヘイ・タウン・センターのなかにある。われわれは毎夕ここに買い出しに通うのを日課としていた。
  ちなみにキヘイにはもう一軒、スターマーケットというスーパーマーケットがある。場所はもうすこし北寄り、アゼカ・プレイスの隣り。
  どちらも店内は似たようなものだが、前者はビールの、後者は鮮魚の種類が多い。また前者は最初に行くとカードをつくってくれ、以後一定の割引サービスがうけられる。後者は買い上げ金額におうじて割引チケットをくれる。
 

 下からタンク車を牽引したピックアップ・トラックが登ってきた。運転席にいたのは、サングラスをかけた女性レンジャーだった。タンク車が公衆トイレに横づけされると、バババババッーとすさまじい音ととともに、エンジンが唸りはじめた。女性レンジャーはいったんビジターセンターへあがっていき、すぐに戻ってきた。そして、わたしのところにやってきて、早口にこういった。

「お子さんたちは塗り絵は好き? そう、それはよかった。たしか、まだ残っていたとおもったけど」

 彼女は腰につけた無線機にむかって確認した。すぐに返答が返ってきた。0930から山頂の展望台でビジターを集めてトークがひらかれるから、塗り絵はそのときに届けるわ、と彼女はいって、ふたたびビジターセンターへ登っていった。

     
     
   

 ビジターセンターから山頂の駐車場までは、トーラスで5分とかからなかった。駐車場の中央の植え込みには、ハワイの固有種として有名な銀剣草 (Silversword) が植えられていた。大きさはサッカーボールほどもあるだろうか。山頂が寒いということは予想していたから、子どもたちには、かねて用意のポンチョをかぶせた。《みの》も《なな》もハロウィーンの仮装行列みたいな恰好になったが、本人たちはいたってよろこび、よちよちと石段をのぼった。30段ものぼると、稜線にでた。そこが頂上だった。八角形の展望台がつくられ、標高10023フィート (3055m) のハレアカラ山頂であることをしめす碑がおかれていた。

     
   

     
   

 この標高は乗鞍岳剣が峰の3026mにほぼ等しい。山頂付近までクルマで登ることができる点も似ている。異なるのは、乗鞍が山脈のなかの一ピークなのにたいして、ハレアカラは太平洋上に浮かぶマウイ島の東半分をなす独立峰である点だ。雲のない今朝は、マウイ島だけでなく、モロキニ、カホラウォエ、ラナイ、モロカイ、ハワイの島々の姿まで認められる。

     
   

     
[**] 「1」に掲載したパンフレットのこと。エントランスで入園料を払ったさいに、もらった。ハレアカラ国立公園の地図と概略がまとめてあって、わりあい有用だ。日本語版があるかどうかは不明。  

 島の最高峰に立つということは、その島の地学的成り立ちを体感することでもある。山手線の内側に匹敵する面積をもつという山頂クレーターは赤茶色一色だ。かつて『2001年宇宙の旅』のロケも行われたという。その向こう、東のハナ方面へ下る斜面は濃い緑色をしており、はるか下方の海際近くには、北東から卓越する貿易風がハレアカラにぶつかって多量の雨を降らしているのが見てとれた。山頂から反対の南西側斜面にかけては乾燥した風が吹き下りるため、砂漠のような景観をなしているというわけだ。ナショナル・パーク・ガイド [**] によれば、北東斜面の年間降雨量が400インチ以上(なんと約10000ミリ)であるのにたいして、南西側では10インチ(約250ミリ)にも満たない。ちなみに東京の年間降雨量は1900ミリ強である。

 


もどる

つぎへ