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6 塔にのぼる |
高いところがあれば、のぼってみる。それが散歩旅の基本である。 竹富は、波照間と同じく地学的にいえば隆起珊瑚礁で、その地質は琉球石灰岩による(参照元)。だから最高海抜20.5mという平たくて低い島であり、ちょうどコーヒーの受け皿を伏せたような恰好をしている。まんなかの盛りあがったところ──伏せたお皿の底──に集落がある。そして、その集落のなかに、高くて見晴らしのよさそうなポイントが3つばかりある。 ひとつは、なごみの塔。公民館の前の道を西へ少し下ったところにある。花が植えられ、きれいに整備された小公園みたいななかに立っているコンクリート製の小さな古い物見塔である。もともとなんのために建てられたのか、よくわからない。のぼってみると、大人が二人も立てば身動きできないほどの展望台がある。地形的に、とくに竹富島の西半分の眺望がよい。コンドイ浜の向こうに、西表の黒々とした島影が横たわっているのが見える。 |
なごみの塔からの眺望。左から東、南、西。夕刻だったので、西の西表島の向こうに陽が沈もうとしている。 |
もうひとつは、集落内にある給水塔。鉄製の階段は鉄条網で塞がれている。だが、なぜかその鉄条網は押しひろげられてあまり機能していないようである。1995年の夏に《みの》をだっこひもにくくりつけて、のぼってみたが、階段は錆だらけで、いつ抜けるか気が気ではなかった。むろん、公式的にはお薦めはできない。 |
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さいごにあげられるのは、竹富小中学校の南にあるンブフル丘である。ここは遺跡でもあるようで、「牛が一晩で積みあげた」という伝承がある。竹富島最高海抜地点であると同時に、個人の所有地でもあるらしく、住宅が立っている。その屋上に、有料ではあるが、頼めばのぼらせてくれる。わたしは、のぼってみるつもりでレンタサイクルででかけてはみた。だが、屋上への階段の横にあるそのお宅の窓からは、あまりに個人生活むきだしの光景が目のあたりにできることを知った。そして、そこへ入り込む気力はどうしも湧いてこなかった。したがって、ここの眺望については体験的なことはなにもいえない。 |
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