常磐道の全通
この3月(2015年)のこと、ディフェンダーで常磐道を走りに行ってきた。常磐道はその月の初めに未成区間(富岡IC─浪江IC間)が開通し、全通したばかりだった。そのときの記録をあげておこう。
開通した区間は福島第一原発の事故で帰還困難区域とされている地区も通過する。事故以来ながらく封鎖されていたR6も昨夏に(条件つきながら)再開通しているので、そこも走破してみようとおもう。
まずは富岡まで
日曜日の常磐道は、水戸あたりまではそこそこの交通量があったものの、まずまず順調に流れていた。
ひたすら北をめざして常磐道を走る。全通記念キャンペーン中ということで、事前にETCカードを登録しておくと、ポイントが倍つくのだそうだ。もちろん登録しておいた。
中郷SAで休憩。こんな掲示があった。
走りだしてすぐにフロントガラスに鳥の糞が落ちてしまった。さっき拭いたばかりなのに。ディフェンダーのフロントガラスは、今どきの車のように三次曲線になっておらず、ただの平板ガラスだ。そのため風を正面からもろに受けて空気抵抗が大きく、また虫がぶつかってきたり、鳥の糞が付着したりと、汚れがつきやすいようにおもう。
湯ノ岳PAに入って、トイレ休憩兼フロントガラス拭き。売店さえないちいさなPAだったが、パンの移動販売車が出ていた。
ここに、こんなモニターがあった。この先の区間の線量が一覧で表示されている。
広野の火力発電所の排気筒が見えてきた。
線量計だらけの常磐道
このあたりは一年前(2014年2月)にも走ったことがある。あのときは路肩に仮設の線量計が設置してあった。下は当時の写真である。
しかしながら、この仮設線量計は撤去されたらしく、今回は見あたらなかった。代わりに、正式のものらしい線量計が、このあといくつも登場することになる。まずあらわれるのが、この先、広野から南相馬までの区間の線量の状況を予告する表示板である。
富岡ICまで15kmの標識だ。すでにこのあたりは、昼間の一時帰宅可能な区域である。
線量計があらわれた。毎時0.2マイクロシーベルトを示している。
周囲の各所に野積みされていた黒い袋(除染土をつめたやつ、フレコンバッグとよばれる)の姿がずいぶん減っているようにおもわれた。べつの保管場所へ移動させられているのかもしれない。
新規開通区間は高線量
富岡ICを通過した。ここまでは一年前にも来たことがある。この先から南相馬までが、今回あらたに開通した区間である。
「ここから帰宅困難区域」の標識があらわれた。
富岡から浪江までのあいだが5つの区間にわけられており、それぞれに線量計が設置されている。
富岡町と双葉町の境界あたりにさしかかると突然高くなる。これは双葉町に入ったところにあった線量計だ。毎時5.6マイクロシーベルトを示していた。この日の常磐道でもっとも高い値であった。
このあたりは、ちょうど福島第一原発の北西、事故当時の風下にあたる方角である。とはいえ常磐道はやや内陸側をとおっているので、海沿いにある福島第一原発からは少し距離があるぶん、これでも多少はマシといえるのかもしれない。
そこをすぎ、浪江町に入ると、また線量は下がる。下がるといっても、相対的に、でしかないわけだが。
それにしても、こんな高線量下でどんなふうにして工事を進めたのだろうか。作業のひとの被曝量管理など、どうなっていたのだろうか。
浪江ICで降りる。
インターの出口にはパトカーが停まり、マスクをかけた警官一名が立哨している。防護服などはとくに着ていない。あのまま一日あそこに身をさらしていて大丈夫なのかと、勝手ながら心配になる。
無人の浪江市内を抜けてR6へ
そのまま浪江市内へ向かう。
浪江の市内は大通りだけは通行できるが、脇道という脇道にはすべてバリケードが築かれており、進入不可。それでも昼間であれば、許可証をもっている地元のひとに限っては通行が許されているようである。すべてのバリケードについてそうなのかどうかはわからないが、主たる道路へつながるバリケードには警備員が配置されている。
R6に出る。交通量は少なく、かなりの速度で流れている。
ここも交差点という交差点がすべて封鎖されている。信号もほとんどが黄色点滅である。歩いているひとは皆無。
「原子力 明るい未来のエネルギー」
双葉町に入る。バリケードの向こうに「原子力 明るい未来のエネルギー」の標語をかかげた看板が見えた。
双葉町はこの看板を、なんだかんだと理由をつけて撤去しようとしている。これにたいし、子ども時代にこの標語をつくった当人は、反省と自戒のために残すべきだと強く訴えているという。おもしろいひとがいたものだ。ぼくもまったく同感である。
ときどきマイクロバスとすれちがう。一時帰宅するひとを運ぶためのバスらしい。
3.11以後ながらく封鎖されていたR6が開通したのは、昨夏だった。開通したとはいえ、とくに福島第一原発のサイトの脇をかすめて走る浪江の南、双葉から富岡までの区間は高線量らしく(そりゃそうだろう)、途中の停車も車外から出ることも禁止されている。自動二輪や自転車、徒歩での通行も不可である。
金属で囲われている自動車で通過することだけが認められている。だが、一定の速度で通過するとはいえ、それなりに被爆することはまぬがれまいとおもわれた。
そうであるにもかかわらず、常磐道とは異なり、路肩に線量計などの設備は一切設置されておらず、通行者には具体的な数値はわからなかった。まさか、余計なことは知らせないほうがいい、というのでもないだろうに。