世界でもっとも過酷な道のひとつ、ダルトン・ハイウェイを走破する旅その8。いよいよダルトン・ハイウェイへ突入した。堅く締まったフラットダートを走る。ときどきパイプラインが見える。併走しているのだ。
アラスカの自然の風景
アップダウンをくりかえしながら、アラスカ中部の自然のなかを北上してゆく。ひとの姿や人家はない。
路肩に駐車スペースがつくられていた。入ってみると、案内板があった。このあたりの地形と植生にかんする説明が書いてあった。
それによれば、ときどき自然に山火事が発生する。それによって木々が焼き払われて植物が更新される。それがこのあたりの草原のような植生を形づくっているという。
あたりの風景は、たしかに中高木があまり見あたらず、草原のように見える。
パイプラインに沿って走る
道路と併走して、もうひとつ、アラスカの自然を切り裂くように走っているものがある。パイプラインである。
正式な名称はトランス・アラスカ・パイプラインという。プルドーベイで産出される原油を積み出し港のヴァルディーズまで運ぶパイプラインで、ダルトン・ハイウェイはその建設のためにつくられた道路だ。
現在も、パイプラインの保守と、油田のあるプルドーベイとの交通を確保する目的で、ダルトン・ハイウェイは維持されている。
すれちがうクルマとバイク
ときどき、クルマとすれちがう。油田やパイプラインとの関係からか、タンクローリーやトラックをしばしば目にする。業務で走っているらしいピックアップトラックも見かけるし、キャンピングカーなど観光目的らしきクルマも目にする。
バイクも少なくない。たいていはBMWのGSシリーズのような大排気量のツアラーだ。だが一度、ハーレーを見た。あれでダートをえんえん走るのは、怖いというより危険だろう。ぼくならぜったいにハーレーでは走りたくない。
ころころ変わる天候
ドルトン・ハイウェイに入ったころは、どんよりとした雲が垂れ込めていた。やがて、雨粒がぱらついた。ユーコンXLの白い車体は、跳ねた泥でたちまち茶色く染まってしまった。
ところがその先は一転、快晴となった。こんどは暑いくらいだ。
グーグルマップは順調に機能している。どのみち一本道なので細かい情報はあんまり必要ない。ぼくのばあい基本的に、現在の自車位置が相対的にどのあたりなのかという情報をつねに把握していたい。そのためナビは、なるべく広い範囲を表示するようにしている。
ユーコン川をわたる
やがてグーグルマップの地図上に、ユーコン川を示す青い曲線が表示されるようになった。しばらく走っているうちに、実際に川を視認することができるようになった。高い尾根上から見下ろす格好になったためか、最初は大きな湖かとおもった。
下りきったところで、ユーコン川をわたる橋に差しかかった。
橋の幅員は狭く、床板は分厚い木の板でできていた。同様のつくりの橋にはこの先にも何度か出会った。
ユーコン川については、野田知佑さんの本などをとおした知識くらいしか持ちあわせていなかった。イメージだと大河という印象だったが、じっさいの川幅は、江戸川と同じか、それよりやや広いかな、というくらいだった。ただし河原というものがない。北海道の川と同じく、地面をそのまま彫り込んだようにして、いきなり水が流れている。
橋に並行してパイプラインも川をわたる。
わたってすぐ右に折れ、そのパイプラインの下をくぐると、小さなログハウスがあった。グーグルマップでは、なんの施設かいまひとつよくわからなかったが、インフォメーションセンターだった。フェアバンクスから139.4マイル。
その9へつづく。