礼文島の岬と山を歩く 4──礼文岳

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朝、天気予報に反して晴れた

夕方には虹が出ていたのに、夜半からはまた荒れた。雨風が烈しく、シャワーのなかにいるのではないかというほどの勢いで降った。今日は一日スコトン岬で過ごすか、などと眠りながら考えた。

シュラフのなかで、ふと陽の光を感じた。陽の光? 飛び起きた。晴れている。どういうことだ?  予報を見る。やはり礼文は雨、午前中は風が強く吹くということになっている。目の前の現実はまったく異なっている。風もなく穏やかな晴れ。礼文岳に登りにいこう。

鍋にお湯を沸かし、インスタントのたまごスープを入れ、さらにサトウのごはんを投入して、即席のたまご雑炊をつくった。これが朝食。片づけをして支度。軽ワゴンのおじさんも起きてきた。今日は西上泊にアブラコを釣りにいこうかという。工務店を自営しているのだそうで、軽ワゴンのなかはコンパネで自作の車中泊仕様になっていた。さすがに軽だと助手席を倒さないとベッドの長さは確保できない。さらにルーフボックスもあり、そこにも荷物が積んであるという。

キャンプ場を出発して、まずスコトン岬へ向かった。礼文岳方面の天候を確認するためだ。きれいに晴れている。船泊湾が光っていた。雲が速いスピードで流れてゆく。礼文岳に雲はまったくかかっていない。これは行けそうだ。

礼文岳に登る

登山口のある内路へディフェンダーを走らせる。道路脇に駐車場がある。5-6台はゆうに止められそう。ほかに車はなし。ありがたいことに、下は砂利が敷いてあった。雨降りのあともぬかるむことがない。少し迷ったが、上下とも合羽を着込む。もちろんスパッツも。

0915登山開始。昨日のゴロタ岬と同じように、外来種侵入防止のためのマットが敷いてある。靴底をこすりつける。鉄の階段を登ると、そこから先が山道だ。

まず九十九折の道を登って、いきなり高度をかせぐ。尾根に出ると、ダケカンバや針葉樹の生える樹林帯のなかをだらだらと登ってゆく。眺望はあまり効かないが、ときどき木々の切れ間から金田ノ岬の自衛隊のレーダーサイトの白いドームが見える。最初のほうで一度、礼文岳も前方に見えた。しかし歩きの大半は樹林帯のなかで、熊笹の間を黙々と歩く。地面は土で、ところどころ泥や水たまりや、あるいは雨水が川のように流れて登山道を掘り込んでしまっているえところもあったものの、おおむね歩きやすい。傾斜も急なところは少ない。

地元の小学生がつくった、ゴミは持ち帰りましょう的な立て札が、ところどころに立っていた。

今朝いちばんの登山者らしく、登山道を横断するようにして蜘蛛が糸を張っている。それが顔や頭に絡みつく。ポールを持った手を前に出して排障器のようにして、蜘蛛の糸を切ってゆく。尾根に出てすぐに合羽の上だけ脱ぐ。下は面倒なのでそのまま着ていたが、正解だった。泥も跳ねるし、下草もびしょ濡れだった。

登山道は山頂まで4km。標準タイムだと120分となっている。登山口から1, 2kmの地点には、それぞれ看板が立っていた。2km地点まで50分で到達した。看板には山頂まであと70分と記されていた。

そこから少し気合いを入れて登る。そうして樹林帯をだいたい抜けた地点で、少し眺望がひらけた。なんの案内もなかったが第一見晴台であるようだった。

いったん下り、もう一度登る。すると今度はかなり眺望の効くピークに出た。ニセピークである。ここは岩場になっており、その上に立つと、スコトン岬も金田ノ岬も久種湖も、そして反対側には利尻山が今日も雲をまとっているさまを見ることができる。

礼文岳はもう目の前だ。いったん下り、ジメジメした樹林を抜けると登りにかかる。このあたりまでくると、岩や石が多くなる。両側から熊笹が覆いかぶさってきており、それをかきわけながら進む。熊笹から解放されたら、あとは岩場をひと登り。山頂に到達した。

礼文岳山頂のパノラマ

礼文岳山頂は、標高490m。低いようだが、礼文島で最高地点であり、高緯度のため森林限界を抜けている。

天気予報が嘘のような穏やかさ。眺望はすばらしく、360度の大パノラマという状態であった。

スコトン岬、旧須古屯小学校の青い校舎、ゴロタ岬、鉄府海岸、澄海岬、そして西海岸の山々がすぐ下である。八時間コースと思われる道も見える。その向こうには桃岩や、南部の屏風のような岩山も見える。東海岸では、久種湖と船泊、金田ノ岬が見える。

利尻が海に浮かんでおり、沓形からのフェリーが香深に向かってやってくるのも見えた。

謎の島、樺太(サハリン)、宗谷岬とノシャップ岬

金田ノ岬のさらに先に島影が見えた。けっこう大きい。あんなところに島があったかしら。

GoogleMapで調べる。礼文岳山頂でもdocomoのLTEはちゃんとつながった。すると、樺太(現サハリン)の西にたしかに島がひとつある。それがあの島影ではあるまいか。市川に帰ってから調べてみたら、かつては海馬島、トドモシリとよばれた島なのだということがわかった。第二次大戦末期の旧ソ連軍の侵攻にともなって無人島化した。現在ロシアではモネロン島とよんでいるそうだ。

水平線をよく見ると、樺太(サハリン)らしき山影が見えた。

右側には、稚内のノシャップ岬と宗谷岬が二本の槍のように突き出している。

日露が宗谷海峡をはさんで対峙しているようすを、礼文岳からは一望できた。以前に宗谷岬から樺太が見えたことがあるが、ここはその比ではない。

水平線上、左にうっすら見える影が樺太(サハリン)、右の影が宗谷岬、そのあいだが宗谷海峡ということになる。

山頂のゆたかで穏やかな時間

バーナーでお湯を沸かし、昨夕船泊のマリンストアで買ったカップ麺で昼食。そのあと、出発前に《くんくん》がくれたチョコ大福という小さなお菓子をおやつとして食べる。

北からの風は冷たかったが、誰も来ず、穏やかな山頂だった。

山や海を見て、《あ》にメールを書いたりしていたら、あっというまに一時間半もたっていた。まったく期待していなかったところにこんなすばらしい天候と眺望に恵まれたのは、僥倖というほかない。山頂の立て札の根元に安置してあった白い観音様に手をあわせ、感謝する。

その5へつづく

礼文島 2014/09
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長谷川 一 明治学院大学 文学部 教授。博士(学際情報学)。専門はメディア論、メディア思想、文化社会学。散歩旅を愛好。メインブログ「散歩の思考」。

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