チェルノブイリを見に行く話その15。前回その14はこちら。
ぼくたちのほかに2グループが同宿していた。片方のグループは全員迷彩服を着ていた。軍人というわけではなく、そういう恰好をするグループが観光に来ているらしかった。理由はわからない。もうひとつのグループはオランダ人の一行だった。そのことがわかると、NとRはよろこんで話をはじめた。
オランダにも地域によるさまざまな違いがあり、その地域ネタが冗談の種でもあるらしい。あんなに狭い国土で、なおかつ山どころか丘もほとんどもない平地ばかりの土地で、そんなに地域ごとの違いが存在するのは奇妙にもおもわれた。だが、考えてみたら日本だって似たようなものかもしれない。『翔んで埼玉』みたいなものだ。すっかり酔っぱらったオランダのみなさんは大騒ぎしていた。ぼくは、英語とオランダ語がちゃんぽんの会話についてゆけず、ほとんど理解できなかった。
2200にはお開きとなった。消灯時刻だそうだ。みな部屋に戻る。オランダ組はツイン1部屋、Mとぼくはそれぞれにツインの部屋をあてがわれた。
トイレは廊下をはさんだ反対側にあって共用。トイレにいったらシャワーブース付きだった。ユニットバスで、廊下からかさ上げしてあった。配管の都合だろう。全体に南極観測隊の基地のような造りの建物だった。
急いでシャワーをあびた。シャンプーや石鹸の備え付けはなかった。手持ちのものをつかう。シャワーはありがたかった。昼間、天気があまりよくなかったせいもあったのか、湿度が高く、汗だくだった。
部屋には窓がひとつあった。ガラス窓が少し開けられており、そこから夜の冷気が入ってきた。空調設備はなかったが、冷気のおかげで、まずまず暑さを感じることなく、一晩をすごした。
翌朝は気持ちよく晴れあがった。0800食堂へゆく。オランダ組はすでにたべはじめていた。コーヒーは別途注文というので、カウンターでエスプレッソのダブルを注文する。テーブルに戻ると、昨晩は別テーブルだったG氏がいた。ぼくのエスプレッソを見て「いくらだった?」と訊く。60UAHだと答えると、コーヒー1杯だけは料金に込みなんだといって、カウンターへ話にゆき、30UAHをバックしてくれた。けっきょくそのあとコーヒーをもう一杯のんだので、その30UAHはつかってしまった。
朝食の白いプレートには目玉焼きが三つのっていた。オランダ組はそれをパンに載せてたべている。口々に「からだが大きいのでたくさんたべないと」とか「いつも腹がへっているんだ」という。かれらの荷物はとても少ないのに、大きなビニール袋にパンを入れてもちあるき、暇があるとたべている。
「出発は0845!」とG氏がいった。部屋に戻り、荷物をまとめる。どのみちランチにはまたここへ戻ってくることになる。
その16へつづく。