深い森のなかを登る
登山道に入る。道は悪くない。地面は粒度の粗い砂。滑りやすい。石もまじっているが、まだそれほど多くなく、あってもさほど大きくない。岩場になるのはもう少し上まで登ってからだ。
すぐに2.5合目の札があった。その脇でカップルがおにぎりを食べていた。そのすぐ先に3合目の札があった。合目ごとに札がたっており、目安にしやすい。ぼくはだいたい12-15分で歩いた。
登山道はサザエの身のようにぐるりと山体を巻いている。行程のほとんどが深い森のなか。展望はない。下草があまり生えていないので、圧迫感は少ない。真夏ならまたちがうのかもしれないが、この季節、日に照らされず涼しいくらいで、体力の温存という意味でありがたかった。
初めのうちは何人かに抜かされたが、のちにかなりの数のひとを抜いた。登山口の看板によれば、標準タイムは大人で登り三時間、下り二時間半。それよりは早く登れるだろうという気がした。
五合目で小休止
五合目で小休止。ここは樹間から展望がひらけていた。長崎鼻や指宿方面が見えた。
ここで持ってきたクリームデニッシュで朝食。ちょっとつかれて、心なしか足が出にくくなったように感じていたが、このあとは復活した。
トレッキングポールの悲劇
七合目をすぎると、大きな岩があらわれた。ロープのある場所もあった。べつにむずかしい場所ではない。でもトレッキングポールはそろそろしまったほうがいいかもしれない。
そのときだった。右脚がすべった。大きな岩の上を飛び石のようにリズムにのって歩いているとき、右脚をすべらせたのだ。雨が降ったあとというわけでもないのに、岩はとても滑りやすかった。岩の隙間にはまり込んだ。
さいわい脚がはまっただけで身体は落ちなかった。怪我もない。しかし、すべって体勢を崩したときに一気に体重がかかったせいだろう、右のトレッキングポールの中段シャフトが少し曲がってしまった。手で戻そうとしても、びくともしない。そりゃそうだ……。
しょんぼりしつつ、先へ進む。
七合目から、さいごの岩場まで
森のなかを歩いてゆくと、ときどき視界が開ける。そのときどきで方角が異なり、見える地形もちがう。
八合目の札のところでは、女性がひとり座り込んでいた。怪我や過度の疲労というわけではなさそうだった。上から降りてくる人たちにも行き会う。けっこうな数である。
9合目をすぎ、やがて岩場の登りとなった。神社があったが、その先に道はなかった。わずかに戻ると、頂上と下山口と記された古い標識があった。
そして山頂へ
えいやと登ると、そこが頂上だった。休憩を含めて2時間15分で登頂した。