礼文島の岬と山を歩く 2──四時間コース 前編

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四時間コースへ出発

今日はスコトン岬から澄海岬までの四時間コースを歩くつもりだった。八時間コースの前半部にあたるルートなのでこう呼ばれていたのだが、実際に4時間で歩くのはむずかしいため、現在では「岬めぐりコース」と呼ぶようである。八時間コースにしても、実際には10時間かそれ以上かかった記憶がある。いずれにせよ、昨夜の悪天候と無情な天気予報で、さすがに今日は無理だろうと諦め気分であった。

雨は、朝にはいちおう収まり、晴れ間も見えるほどだった。ディフェンダーの中で紅茶を淹れ、パンを食べていると、昨夜Xライトのテントで泊まっていたひとが、ザックにスパッツといういでたちで出かけようとしているのを発見した。0708のバスに乗るつもりらしい。それを見て決心した。せっかく礼文に来たのだから、四時間コースだけは歩こう。

そうと決まれば支度だ。つぎの0833のバスに乗ることにする。雨に遭遇するのは明らかなのだし、そうでなくても道は泥んこ、草もたっぷり濡れているだろう。そこで、合羽上下にスパッツ、レインハット、レイングローブ、ザックカバー、荷物は小分けしてスタッフバッグに入れるという完全雨装備を整えた。

0833のバスの時間が迫っている。急いで準備していると、隣に停まっていた軽ワゴンのおじさんがやってきて、「ディフェンダーいいですね」と話しかけてきた。そして、もう何週間もこちらにいるだとか年金をもらう歳になったとか、じぶんの世間話を始めた。聞いてあげたいが、あいにくこちらには時間がない。このバスを逃せばつぎは3時間後だ。適当に相槌をうっていたら、そのうちおじさんは向こうへ去っていった。

スコトン岬から鮑古丹へ

バスは自由乗降制で、手をあげれば止まってくれる。キャンプ場の前で手をあげたら、ちゃんと止まってくれた。整理券は17番だった。ほかに乗客はなし。右手の船泊湾に虹がかかっていた。このあと知ることになるのだが、天気が猫の目のようにころころ変わる礼文では、しょっちゅう虹が出るのだった。ここは虹の島である。

10分足らずで終点スコトン。岬の駐車場が終点だった。この時間からレストハウスは店を開けていたご苦労なことである。トイレを借りる。ちょうど雨が降ってきた。装備を整えるために、店の軒先を少し借りる。声をかけてお願いすると、気持ちよく了解してくれた。

0900出発。昨日見た旧須古頓小学校の前をすぎる。その奧に見えるのが、いわゆる「とほ民宿」の星観荘。右折して山のほうへ登ってゆく。昨日ディフェンダーでスコトン岬からの帰りに走った尾根沿いの道だ。いまの四時間コースはこの舗装路をゴロタ岬の登り口までずっと歩いてゆくことになっているようなのだが、ぼくは最初の分岐から海岸へおりて鮑古丹の集落経由でゴロタ岬へ向こうことにする。

二十数年前の桃岩荘から八時間コースを歩いたときはこちらのルートだったように記憶している。パンフレットにもいちおう同様の記載はある。途中まで車の通行ができるようなことが書かれているのだが、ほぼ廃道に近い状態だった。

雨水で深く道はえぐれており、崖が崩れている箇所もあって、下のほうは草が生え放題。踏み跡を探さなければならないほどだった。

鮑古丹には家が数軒あった。住んでいるひとがいるのかはわからない。雨がかなり降っていた。ちいさなお社がある坂道は川のように雨水が流れていた。

巨大でカラフルな観光バスが時折姿を見せるが、この天気ゆえ停車しての見学は省略しているようだった。いま団体さんが現れたら、「山装備で礼文島をハイキングするひと」というイメージをきっと演じてしまうだろうとおもった。

鮑古丹からゴロタ岬へ

鮑古丹からゴロタ岬へ向かう山道を登る。入口にマットが置いてある。外来種の侵入を防ぐためのものだという。靴底を拭ってほしいという。

今日初めての山道を歩いてゆく。雨が降っているが、下はおもったほどぬかるんではいない。ふりかえると、魹島、スコトン岬、鮑古丹の海岸が眼下に見える。さらに、船泊湾をはさんで金田ノ岬まで見える。

ピークに到達した。ゴロタ岬の展望台である。

雲が雨を海に降らせているのが見えた。西風だから、あの雨雲がまもなくこちらにやってくるのだろう。そう思う間に、雨がまた降り始めた。

雨ではあるが視界は思いのほか効く。南側をのぞむと、鉄府海岸はもちろん、稲穂ノ崎、さらには礼文岳まで見える。下のパノラマ写真がそれ。

写真2枚を合成したパノラマ写真。ゴロタ岬から島の南方をのぞむ。左側が東海岸である。右側が西海岸で、手前が鉄府海岸、奧に稲穂ノ崎(背後に澄海岬があるはず)、その奧にややかすんで見える高いピークが礼文岳。

昨夜は雷も鳴っていたが、さいわい今朝はそれもない。ただ、一面笹原の丘の上にひとりだけ突っ立っているのも怖いので、鉄府海岸めざしておりてゆく。

ゴロタ岬から鉄府海岸へ

泥んこ状態で、すべりやすい。丸太で階段のようなものがつくられている。晴れていれば歩きやすいのだろうが、丸太が濡れるとすべりやすい。今日はポールを持ってきていないから、自分の手足だけでどうにかしなければならない。

ゆっくりと降りて、鉄府海岸へ。ごろごろとした丸い石がころがる海岸より一段高いところを歩く。作業小屋のようなものが、いちばん手前にあった。軽トラが来ていたが、また帰っていった。いちおう車の往来はあるようである。

いま来た道をふりかえる。奥に見えるのがゴロタ岬だ。

鉄府海岸を歩く

鉄府海岸を歩いてゆく。

行く手に、鉄府の港と、礼文岳が見えてきた。

その3へつづく

礼文島 2014/09
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さんぽのしっぽ

長谷川 一 明治学院大学 文学部 教授。博士(学際情報学)。専門はメディア論、メディア思想、文化社会学。散歩旅を愛好。メインブログ「散歩の思考」。

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