世界でもっとも過酷な道のひとつ、ダルトン・ハイウェイを走破する旅その5。借りたのはフルサイズSUV、GMCユーコンXLだ。ひとりではもてあまし気味のこのクルマを駆って、北極圏をめざすわけだが、そのための準備がまだ残っていた。
セイフウェイでの給油
フェアバンクス市内でやってきたのは、セイフウェイ (Safeway) というスーパーだった。まず併設のガソリンスタンドで給油する。この先は給油ポイントが極端に限られるうえ、週末にかかるため、開いているかどうかも定かではない。
ちなみにこの時点でユーコンのトリップメーターは456.6マイルをさしていた。平均燃費は23mpg (mile per galon) で、ユーコンとしてはかなりの低燃費走行だ。それでも、ミシガンで乗っているフィットの半分に届くかどうかという数字なのだが。
なお、mpg とは mile per galon, つまり1ガロンで走ることのできるマイルという意味で、アメリカでは一般的な燃費の表し方だ。簡易的には、1mile=1.6km、1galon=3.8Lで換算できるので、23mpgを単純に日本式に換算すれば9.68km/lということになる。フルサイズSUVという車格を考えれば、わるい数字ではない。
ガソリンは20ガロン入った。ユーコンのタンク容量は満タンで100L以上あるようだ。うまくいけば満タンで700マイル (1120km)以上走ることができる計算になる。ぼくの日本での愛車ディフェンダーよりも脚(航続距離)はやや長い。ユーコンがこれだけ長大な航続距離をもっていたことも、北極圏行きをあらためて決意するのを後押しした一因であった。
実燃費と残燃料から計算される航続可能距離は、随時メーター内の情報パネルに表示される。あくまでも計算上の数字なので、あまり信用しすぎるのは危険だが、目安として見るぶんには有用だった。
食料の補給
給油のあと、セイフウェイ店内に入って、食料を買い足した。すでにインスタントの袋ラーメンやら缶詰、ミネラルウォーターなどは用意してある。これにくわえて、野菜ジュース缶と、バナナ、ベーグルなどを買った。
パン売り場で、どれにしようか迷っていると、黒人のおばさん店員が声をかけてきた。あっちのベーグルが二袋で6ドルだから安いわよと勧める。見ると一袋に5-6個も入っている。そんなものはアメリカ人仕様なのであって、ぼくひとりでたべきることができるわけがない。
けっきょくバラ売りしていたベーグルを二つだけ買うことにした。北極圏行きのあと、まだ2日ほどアラスカにはいられる予定だ。遅くともアラスカを離れるまでには消費することができるだろう。
通信圏外での走行にそなえて地図データを準備
駐車場に戻り、メールチェックなどをおこなう。フェアバンクスを出れば、あとはルートのほとんどで通信圏外となる。より厳密にいえば、北極海沿岸のプルドーベイ周辺の限られた区域だけが例外的に圏内だ。ただし、4G/LTEではなく3G。
ぼくがアメリカ在住時につかっていたのは、H2OというブランドのプリペイドSIMだった。ここはKDDIアメリカ傘下のMVNOで、AT&Tのネットワークをつかっている。その通信圏マップによると、アラスカで通信圏内なのは、アンカレッジとフェアバンクス周辺、およびそれらをつなぐ幹線道路ぞいのみで、それ以外はほとんど圏外だ。人口が極端に希薄なためだろう。
ちなみに、ユーコンにはビルトインのナビもついていたが、そちらは補助的につかうこととし、メインとしては、持参したiPhone SEにグーグルマップを表示させてつかうことにした。これも圏外にでてしまえば当然通信できないのだが、それにそなえて、あらかじめWi-Fi環境下にいるうちに、当該地域の地図データをダウンロードしておいた。これがけっこう正確で、有用だった。
というわけで、ここまでが長いながい準備篇である。次回はいよいよフェアバンクスを出発する。
その6へつづく。