初積雪の十勝をレンタカーで走る旅その7。大樹町の晩成温泉を出発し、ふたたび雪道を帯広空港へ向かう。
晩成温泉から帯広空港へ向かう
晩成温泉から帯広空港へ向かう。帯広空港とはいうものの、実際には帯広市街中心部からはだいぶ南、中札内に近いところにある。
太平洋岸の晩成温泉から空港へいたるルートは以下のとおり。当日ヴィッツに搭載されていたカーナビが引いたルートそのままに走った。
距離43km、50分ほどで到着、というのが、原稿執筆時にあらためてグーグルマップで示してみた予測値である。当日は雪道だったこともあり、この数値よりやや時間を要し、一時間ほどかかったと記憶している。
雪のなかを歩くひとびと
晩成温泉をでてすぐ、内陸に向かって直線道がつづく。海岸段丘を登ると、道は左へカーブする。そのあたりで、前方をこちらへ向かって歩いてくる集団と出くわした。
傘をさして歩いているが、この風と雪でほとんど効果はなさそうだった。かれらは道のまんなかを歩いていたが、ヴィッツに気がつくと路肩に寄った。こんな天候のなかこんな場所をこれほど無防備な格好で歩いているのは、地元のひとではないし、ふつうの観光客でもなさそうだった。なんとなく、中国あたりから来たひとたちのように見えた。働きに来ているのだろうか。
雪道ドライブ
いったんナウマン国道へでるものの、ほんの少し西へすすむと、すぐに右折して細い道へ入る。この道も以前に走ったことがある。ナウマンゾウが発掘された場所の横をとおる道だ。国道でも主要道道でもないので、除雪が追いついているか気がかりだった。いちおう除雪は入っているようだったが、それからだいぶ時間が経っているように見えた。
対向車はほとんど来ない。一、二度トラックとすれちがった。トラックがやってくるということは、この先もいちおう通行できるということだろう。
帯広空港で借りたレンタカーのヴィッツは四駆だったので、ふつうに雪道を走行するぶんには問題ない。それでも凍結していたり、雪が溜まっていたりする箇所ではところどころ少し滑る。滑るたびに、メーターパネル内でオレンジ色のインジケーターが点灯する。
森を抜け、野を抜ける。野は、たぶん畑なのだろうが、いまは一面雪野原だ。前方は垂れ込めた雪雲にけむって、かすんでいる。
道道657で忠類の街の北側をかすめ、R236へ入る。すぐ南には、帯広・広尾自動車道が並走している。無料区間ではあるが、そちらへは入らず、旧い国道のほうを走る。北海道では、都市部をのぞけば、下道でもほとんど所要時間は変わらない。なにより、高速道路は走っていておもしろくない。
雪が烈しくなる
R236を更別まですすむ。更別の街中で右折して国道からはずれる。
道道716→道道238とすすむ。まっすぐな直線路が、まったいらな十勝の平原を切り裂くように走っている。遮蔽物がないため、風はもろの車体へ吹きつける。雪は烈しさを増す。フロントウィンドウでは、中心から放射状に、無数の白い粉が糸を引きながら、あとからあとから湧き出るようにとんでくる。『スター・ウォーズ』でハイパードライヴをしている最中みたいな眺めである。視界はますます効かなくなってきた。
上の写真で、路肩にたったポールの先に赤白に塗り分けられた矢印があるのが見えるだろう。雪が降ると、視界が効かなくなるだけでなく、道路とそうでない場所との境界も雪に覆われて判別しにくくなる。どこが道路なのかわからなくなるのだ。そのとき道路の端を示す役割をはたすのが、この路傍の矢印である。
雪はさらに烈しくなった。路傍の矢印がない箇所では、道路境界はじじつ見分けがつきにくい。
それでも、このていどの積雪量なら、路肩に生えた枯れ草で、かろうじて道路境界が推測できる。
レンタカー返却
そうして、夏ならばトウモロコシやジャガイモが一面に植えられていたであろう一面の雪野原のなかを突っ切って、帯広空港に隣接するレンタカーステーションまでたどり着いた。
途中で給油してから返却するつもりだった。しかしガソリンスタンドが見当たらないまま、ここまで来てしまった。中札内までいけばガソリンスタンドが見つけられるかもしれないが、そこまでの時間的余裕はない。それに、この雪のなか、必要以上にうろうろするのも賢明ではないだろう。そう判断して、レンタカー会社で給油してもらうことにした。給油単価はだいぶ高くなるが、やむをえまい。
レンタカー返却時の気温は-3℃だった。
ともあれ、レンタカーを返却し、係の女性が運転する送迎バンで空港ターミナルへ送ってもらった。すぐ隣なので、わずか5分たらずのドライブだ。
復路便の出発にはじゅうぶんまにあう――そう、そのときはおもって油断していた。
その8へつづく。