世界でもっとも過酷な道のひとつ、ダルトン・ハイウェイを走破する旅その23。とうとう北極海に面した街プルドーベイに到着した。街は永久凍土の上に浮かぶようにしてつくられていた。
グーグルマップ上では、目的地はプルドーベイの中心部らしき箇所に設定してあった。そこが、ダルトン・ハイウェイの終点のようにおもわれたからだ。それに、行けるものなら、北極海のほとりまで行ってみたい、という気持ちもあった。
グーグルマップの指示どおりに走ってゆく。すると途中で、道路のまんなかに検問所のような建物があらわれた。そしてこのときぼくは、その意味を深くは考えていなかった。
検問所の前で、ユーコンXLをいったん停めてみた。検問所の窓ガラスは、見たところ真っ黒だった。マジックミラー式になっているらしい。なかのようすをうかがうことはまったくできなかった。
しばらくそのまま待ってみた。だが、なかからひとが出てきたり、声をかけられたりということはなかった。反対車線ではクルマがふつうに流れていた。ぼくの目の前のゲートは上げられていた。それで、そのまま進んでみることにした。
検問所を過ぎても、まわりの風景にさしたる変化はなかった。プレハブの建物に、作業用の資材や重機がならんでいた。道路はあいかわらずの泥濘だ。
対向車線から、黒いSUVが二台やってきた。ぼくのユーコンXLとすれちがいそうになったその瞬間、それまで前後にならんで走っていた二台のSUVがさっと分かれてこちらへ向かってきた。そして、ユーコンXLを挟み撃ちするようにして、前と後ろに入って急停車した。
こういう場面を、これまで何度となくハリウッド映画で観てきたなという感覚とともに、ぼくはユーコンXLのブレーキを踏んだ。というか、前後を塞がれた以上、停車せざるをえなかった。
なんかマズイことをしてしまったみたいである。
その24へつづく。