チェルノブイリを見にゆく話その2。前回その1はこちら。
当日、指定された集合時刻は、朝0745だった。場所は、キエフの中心部にある独立記念広場の北側にある、Kozatsky Hotel前、とのことだった。それ以上詳しい情報は知らされていなかった。ちなみに、場所はこちら。
指定場所から少し離れたところに、車腹にSolo Eastのロゴの入ったミニバスが何台か停まっていた。手前にたっていた係員らしきひとに声をかけてみた。彼女はぼくにリストを見せ、「名前はある?」と訊く。ない。そういうと、「じゃあ別のバスね」といわれる。そんなことを数回くりかえした。だが、ぼくの名前の載ったリストをもったひとはあらわれない。そのうち、あるガイドが、「今日は二日間ツアーの催行はないんじゃないかな」といいはじめた。
仕方なく、最初に声をかけた女性ガイドにあらためて訊ねてみた。その場にいた数名の係員のうちで、彼女がいちばんしっかりしていそうだったからだ。彼女は、すべてのバスのリストをもっていた。それをぼくに見せながら、「二日間ツアーの参加者は、あなたを含めて四人。まだガイドが到着していないだけだとおもう」と教えてくれた。
集合していた参加者の大半は白人の若者たちだった。ほとんどが日帰りツアーの参加者だ。今日だけでミニバスが5台もでるのだという。HBO制作のドラマ『チェルノブイリ』がアメリカやイギリスで大ヒットし、その勢いでツアーも盛況らしい。
女性ガイドが、そこの二人も二日間ツアーだと教えてくれた。少し離れたところに、背の高い白人の青年がふたり立っていた。かれらに声をかけて自己紹介をした。かれらはオランダから来たNとRだと名乗った。
ぼくたちがおしゃべりしていると、迷彩柄のズボンをはいた中年男性がやってきた。ガイド兼運転手のG氏だった。目は青く、小柄だががっしりしたからだつきである。
チェルノブイリ地区に入るには許可書が必要だ。申請は事前におこなっており、手続きは旅行社が代行してくれる。G氏がぼくたちに許可書を手渡す。許可書に記されたパスポート番号を照合するため、パスポートを見せるようにいわれる。ぼくのバスポートを手にしたG氏は、ぼくの顔をしげしげとながめ、「あなた、若く見えるね」といった。かれは、一見するとぼくより歳かさであるようにも見えるが、実際のところはぼくより若いのかもしれない。
ここでNとRが、旅券番号ではなく、誤って別の番号を知らせてしまっていたことが発覚した。二人は焦ったようすだったが、G氏は、正しい番号を事務所へ伝えて発行しなおすから大丈夫だという。
そこに四人目がやってきた。バックパックにくわえて、ビニール袋やら傘やら、山ほど荷物をかかえている。さらに片手にテイクアウトのコーヒーまで。アメリカのオレゴン州から来た女性で、Mという。
あとで知ったが、オランダ人のNとRは25歳、オレゴンの女の子Mは27歳だそうだ。ぼくからすれば、子どものような年齢のメンバーと同行することになったわけだが、かれらはそれぞれ気持ちのよい人柄で、日本人のようにそれほど年齢を気にするわけでもなかったので、ぼくとしても気が楽だった。
その3へつづく。