石垣島の最北端である平久保崎をめざす徒歩旅その12。明石から東海岸ぞいにえんえんと歩くこと5時間ほど、ようやく平久保崎にたどり着いた。
平久保崎燈台へ
平久保崎のちいさな駐車場の脇に、燈台への登り口がある。いまではふつう「灯台」と書くが、この語については「燈台」と書くほうがしっくりくる。とくに旧字にこだわりがあるというわけではまったくないのだが(丸谷才一ではあるまいし)。
駐車場からものの1分も歩けば、すぐに燈台である。
あいにく薄曇りだが、眺めはよい。オフシーズンにもかかわらず、レンタカーでやってきた観光客がつぎつぎと記念写真を撮ってゆく。自撮りのひともめずらしくない。なんでわざわざじぶん自身を写しこんだ写真を撮りたいのか、ぼくにはさっぱり理解できない。そんなに誰もかれもが「じぶん大好き」なんだろうか。
「ひろさ」を感じる——平久保崎からの眺め
これくらい高いところから海を眺めると、ビーチから先の海が環礁(リーフ)に取り囲まれているのも、肉眼でよくわかる。
右手(東側)には、浦崎から平野ビーチ、そして段丘上の平野の集落まで望むことができる。あの海岸線をずっとじぶんの足で歩いてきたのかとおもうと、なんともいえず、すがすがしい気持ちになる。
平久保崎を訪れるひとの大半は、レンタカーや観光バスで来て、写真を撮ってすぐに立ち去るというスタイルが多いだろう。けれど、それだと、定番景勝地を踏み、既知の情報を確認するために来た、という以上のものにはなかなかならない。それではおもしろくないというひとには、ぜひ歩き旅をおすすめしたい。歩くとは、土地との対話であるのだから。
この燈台前の展望台からの眺めでもっともすばらしいのは、「ひろさ」を体感できることである。あいにくそれを写真で表現するのはむずかしい。せめて、ここで撮ったパノラマ写真をあげておきたい。
遠見台の跡
坂道をくだって駐車場へ戻る。全景といっても、これだけ。ハイシーズンは混雑して大変なのだろうとおもわれる。
駐車場をはさんで反対側、上の写真でいうと駐車場の背後にある丘は、かつて「遠見台」のあった跡なのだという。遠見台とは、監視所みたいなものだ。「南の島」というとのんびりと平和なイメージがあるかもしれないが、歴史的にはいろいろな力学にさらされつづけてきたのであり、この遠見台跡は、そんな石垣島や八重山諸島の歴史を示す痕跡なのだといえるかもしれない。
なお現在は私有地のため、観光客が無断で進入することは禁じられているとのこと。
移動販売者では、ブルーシール・アイスを売っていた。心惹かれないでもなかったが、がまんしておく。
黒板に今日の気温などが記されていた。文面からしてあきらかに観光客向けである。地元のひとは平久保崎に来たりはあまりしないのだろう。
復路は県道を歩いて
さて、そろそろ帰途につこう。
来た道をてくてく歩いてくだってゆく。15分ほどで県道にでた。平野の方角をふりかえってみた。道路にそって電柱が整列し、それが海までつづいているように見えた。
復路は県道206を歩いて帰る。明石まで約10km、2時間ちょっと。夕方までには帰り着くことができるだろう。
その13へつづく。