今冬はじめての積雪となった十勝をレンタカーで走り、太平洋岸にある大樹町の晩成温泉までやってきた。
銀河連邦カムイリオン
館内は、ポスターだらけだった。前からポスターはぺたぺた貼ってあったとおもうのだが(北海道の温泉はだいたいどこもそうだ)、これほどまでポスターだらけだったっけ?
いろんな貼り紙が貼られた壁の前に、今様なヒーローキャラのポスター、というか、立て看があった。「銀河連邦カムイリオン」とある。なんのこっちゃ?
このときは意味がよくわからず、晩成温泉のキャラクターなのかしらとおもっていた。だが、あとで調べたところ、「カムイリオン」は大樹町のキャラクターなのだということがわかった。「銀河連邦」とは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究施設のある市町が集まって、そう称しているのだそうだ。
たしかに大樹町にはJAXA宇宙研究所の航空宇宙宇実験場という施設がある。
それだけではない。大樹町には「コスピー」というゆるキャラもいるらしい。
ゆるキャラだけでなくヒーローキャラまでかかえているのは、大樹町ががんばっている証と理解すればいいのだろうか。
赤チン色したヨード泉を推す
さて、この立て看では、その大樹町のヒーローキャラ「カムイリオン」が晩成温泉につかっている。
手描きふうを狙ったのか、実際たんに手描きなのかはわからないが、この絵が強調するのは、泉質がヨード泉であることだ。晩成温泉は、ヨードを高濃度に含有することで日本有数なのだという。じっさい、お湯は赤チンの匂いがする。
その赤チン色をした湯に「カムイリオン」とともにつかっている残りの2名(2体)のうち、手前は先述したゆるキャラの「コスピー」であろう。背後にいる手ぬぐい(?)を頭にかぶったような恰好をしているのは何者なのだろうか?
こちらのポスターも「ヨードの湯」と泉質推しである。赤く火照った地元のおっさんたちが集結している暑苦しい姿が、お湯の熱さをうまくあらわしている(のだろう)。
「眺めなんて二の次よ!」と豪語している。たしかに、晩成温泉には露天風呂はない。浴室の窓から外をみれば、つかみどころのない十勝の海岸がひろがっているだけだ。だから一般的には「眺めなんて二の次」という評価になるのかもしれない。
でも、ぼくにとっては、晩成温泉の眺めはほぼ最高なのだけど。
大浴場へつづく渡り廊下
大浴場までつづく、長ーい渡り廊下。ここも両側にポスターが貼られている。まるで美術館の絵画の展示のようである、といえなくもない。先述したJAXAの実験場のポスターもあった。記憶が曖昧だが、ホリエモンが出資しているとかで話題にのぼる民間のロケット会社の拠点の写真も貼ってあったような気がする。ここ大樹町に拠点があるのだ。
効能書きもぺたぺたと
渡り廊下を歩き終えると、大浴場のある建物に到着する。
男性用の青い暖簾をくぐって更衣室へ入る。そこの壁に貼られているのは、温泉の成分表、いわゆる効能書きである。
ここもまた同様に、壁という壁に貼り紙がしてある。効能書きが、なぜか何枚も貼ってある。そのいずれもが、少しずつ書きぶりが異なっているのが興味深い。
それにしても、どれが正式の書類なのだろう?
こちらの効能書きには、晩成温泉にかんする新聞や雑誌の記事の切り抜きが添えられている。やはりヨードが多く含まれているという泉質推しである。
こちらの記事の写真には、晩成温泉の上空にまっすぐな虹が浮かぶさまが撮影されていた。「環水平アーク」といって、大気中の氷の粒に太陽の光が反射して虹のように見えるめずらしい気象現象だという。
避難経路と一期一会
こちらの貼り紙は、津波襲来時の避難経路を示したもの。大事な情報である。なにせここは目の前が海だから。
写真中の図でいうと、晩成温泉は右下の太平洋岸にある。海岸といっても段丘上なので、それでも海抜15-16mほどはある。津波襲来時には、矢印にしたがって左上の地点(晩成福祉館)まで避難することになっているようだ。そこまでいけば、もう一段上の海岸段丘上となって海抜50m以上あるらしい。ただし、距離は遠い。温泉から4.7kmもある。徒歩で避難するのはむずかしいだろう。ちなみに、大樹町のサイトにあるハザードマップで確認すると、上の避難経路は高さ20mくらいの津波を想定したものだという。
その5につづく。