世界でもっとも過酷な道のひとつ、ダルトン・ハイウェイを走破する旅その6。長い準備篇を終え、フェアバンクスでの給油と買い出しもすんだ。いよいよ出発だ。
フェアバンクスを出発
さて、そんなわけで、フェアバンクスを出発したのは、1300すぎのことだった。
ウォルマートの前の交差点を左折すると、もう街はずれだった。その先はアラスカ州道2号を北へ向かって走る。
計画はまだまだ慎重に
とはいえ、この時点ではまだ、ダルトン・ハイウェイを全線走りとおすことを最終的に決めてはいなかった。なんといっても、事前の情報収集だけでは状況がはっきりしなかったからだ。現地に入ってみないことにはわからないことだらけだった。
だから、まずはともかく、ダルトン・ハイウェイに入り、途中ユーコン川をわたったところにあるユーコン・リバー・クロス (Yukon River Cross) という集落をめざすことにした。そこまでのようすしだいで、そこから先のことは決めようと考えたのだ。
仮にユーコン・リバー・クロスの先までゆけそうだとなったとしても、ただちにプルドーベイをめざすと決めたわけではない。そのあとも何段階か、関門というか目安を決めて、そこへ達するたびに、その先へすすむかどうかを判断しようと考えていた。情報のはっきりしないなか、そのくらいの慎重さは必要だった。
エリオット・ハイウェイ——アラスカ州道2号
フェアバンクスをでると、しばらくはずっと快走路だ。アラスカ州道2号、通称エリオット・ハイウェイである。
このルートは、かなり起伏に富んでいた。山を登ったり下ったりをくりかえす。勾配も、けっこう急である。
パワーのない小型車は安定して走るのがむずかしいようだ。少し前を走っていた赤いフォードは、速度がでたり遅くなったり、右へ寄ったり、左のセンターラインのほうへ流れていったりと、苦労している。うしろから見ていても、ドライバーの難儀ぶりがはっきりわかるくらいだった。
大変そうだなとおもって見ているうちに、とうとう途中で路肩の駐車帯に入ってしまった(注:けっしてぼくが煽り運転をしたわけではありません)。
丘と森と山を縫って
そうこうするうち、まわりに車はほとんどいなくなった。
坂をくだるときには視界がひらける。見えるものは、アラスカ中部の大地の様相だ。
丘はゆったりとした曲線を描いて波打っている。その表面には、針葉樹がまだらに生えている。その取り合わせは、どこまでも、見わたすかぎりつづいている。対照的にそのはるか彼方には、峻険に屹立する山々の姿が見える。
やがて、ところどころ未舗装区間があらわれるようになった。
その7へつづく。