世界でもっとも過酷な道のひとつ、ダルトン・ハイウェイを走破する旅その19。13時間走り、夜中ちかくになって、ちいさな峠にあった駐車帯に入って仮眠した。白夜の北極圏は、夕景を見せてはくれるものの日が暮れることはなく、そのまま朝を迎えた。北極圏は、夏至からひと月たったいまでも、まだ白夜なのだ。
白夜あけて
0530に目が覚める。雨はやんでおり、明るかった。すっかり朝になっていた。
眠りは浅かったが、時間から推察して、ひとサイクルは眠ることができた。
日本医師会のホームページによれば、ぼくたちはノンレム睡眠とレム睡眠を90分ずつくりかえしているらしい。だから睡眠は、3時間単位だと寝覚めがよいみたいである。
峠の朝
パン2枚、バナナ、野菜ジュース2本で朝食。
寝ているあいだはシュラフのなかでも寒かったので、折りたたみ式のダウンを羽織ることにした。
支度をしていると、隣にいたトラックが先に出発していった。昨晩ぼくより遅れてやってきたやつだ。
トラックと書いたが、正確にはトレーラーである。トラクターが貨物のトレーラーを牽いている形で、ひじょうに長大である。
ダルトン・ハイウェイは、いまも物資や石油を運ぶ路線として、このような巨大なトラックも走行可能なようにつくられている。
ただ、そのつくりは、日本の基準では道路扱いされないような簡素さである。基本的なつくりは、湿地なり森なりをつぶして砂利を敷いて踏み固めておしまい——みたいな程度だから。
ふたたび出発
0655ぼくも出発した。このペースでいけば、午前中のうちにはプルドーベイへたどり着くことができそうだ。
駐車帯があったのはちいさな丘の上だったから、走りはじめると、いきなり下る。
ツンドラ帯のため樹木はなく、氷河地形ゆえに大地はゆったりしたカーブを描いており、はるか地平線まで見通すことができる。
そのあいだを、道路はパイプラインと絡まりあうようにして走る。
その20へつづく。