世界でもっとも過酷な道のひとつ、ダルトン・ハイウェイを走破する旅その28。北極海に面した街プルドーベイで、石油会社の警備員につかまり、詰所でチェックを受けた。さいわい、ぶじに放免してもらえることになった。
ガソリンスタンドの先に、ジェネラルストアがあった。ここにも立ち寄ってみた。
建物はこの地のほかのものと同様に高床式だ。一階は金物を扱っており、二階が雑貨だ。
Tシャツを一枚買った。わりにおとなしめの図柄を選んだのだが、多くの商品には髑髏が描かれていたりして、ここで働くひとたちの気質がうかがえる気がした。
お店でトイレを借り、車へ戻る。この先は一般車両は通行できない。事実上のドルトンハイウエイの終点である。でも碑も看板も何もない。
ストアの向かいの大きなプレハブは、ホテルらしかった。泥まみれのバイクが二台止まっていた。
小雨が降りつづけている。ユーコンXLに戻って、車内でパンをたべ、野菜ジュースを一本飲む。
さっき警備員たちが車内を点検したため、シートやら内装やらあちこちに泥がついている。かれらの手が泥まみれだったということなのだろう。仕事とはいえ日曜日に大変である。
この極北のこの地で、泥から自由になるということは考えにくい。この時期、雨がつづく。舗装された道というものは見あたらない。どこもかしこも泥だらけだ。
街とよぶのもはばかれるような、石油掘削のためのキャンプには、出稼ぎと仮初めの気分が充満していて、開拓時代の西部の町みたいに殺伐として感じられる。見かけるのは、おっさんばかり。女性は、ジェネラルストアのおばさんを除いて、まったく見かけなかった。
iPhoneでネットにアクセスもできた。事前にH2Oのウェブで確認してきたとおり、アラスカ中部から北部にかけてはほとんど圏外なのに、このあたりだけは飛び地のようにサービスエリアに入っている。仕事とはいえ屈強なおっさんたちばかりが何か月もここに閉じ込められているのだ。ネットの需要の大きさには大変なものがあるにちがいない。
というわけで、北極圏をぶじに縦断して、北極海に面した最奥まで陸路で達することができた。いろいろあったが、なかなかたのしかった。来られてよかった。
その29へつづく。