復路はひたすら ―― 爆走アラスカ・ダルトン・ハイウェイ1000マイル 30

世界でもっとも過酷な道のひとつ、ダルトン・ハイウェイを走破する旅その30。フェアバンクスから500マイルを走破して、北極海に面した石油掘削のためのキャンプ、プルドーベイに到達した。あとは来た道を帰るだけだ。

道路工事のおじさんと話す ―― 爆走アラスカ・ダルトン・ハイウェイ1000マイル 29
世界でもっとも過酷な道のひとつ、ダルトン・ハイウェイを走破する旅その29。フェアバンクスから500マイルを走破して到達した、北極海に面した街プルドーベイ。一時、石油会社の警備員に拘束されたものの、ぶじに放免。給油をすませ、ジェネラルストア......

先導車があらわれた。車列が動きはじめる。ぼくも、おじさんに手を振って、走りだした。けっこう長い距離を、先導車のあとに従って走った。

ダルトン・ハイウェイの脇を流れるサグ川。北極海沿岸のこのあたりの地形に起伏というものがない。平らな地形がとめどなくひろがり、茫漠としている

やがて先導車がはずれると、前のトラックたちはたちまち速度をあげた。飛ばす飛ばす。泥どろのダートなのに時速70マイル以上だしている。この流れに付いてゆくのはやめた。この路面状態にこの速度では、カーブを曲がりきれない怖れがある。

プルドーベイからダルトン・ハイウェイを南へ向かう自転車。この日ぼくが見た唯一のチャリダーだった

自転車ツーリングのひとを、ひとりだけ見かけた。泥でタイヤがとられて、ほんとうに大変そうだった。全線走破するつもりだろうか。ふつうに走ってもアップダウンがきつく、距離が長いうえに、補給ポイントが極少のため、文字どおり過酷だろうとおもわれる。この日、自転車で走っていたのは、かれだけだった。

道路補修工事のため一時停止中

そのあともう一度先導車がつく場面があった。時間帯ゆえか、対向車はほとんど来ない。路面の補修はだいたい完了したらしい。道路にしてもパイプラインにしても石油掘削基地にしても、これだけあれこれ人出も手間もかけて維持しているのは、それだけ儲かるひとがいるということだ。日本の原発と一緒である。

サグ川の対岸が少し小高い丘になっている

川の対岸に崖が見えるところまで戻ってきた。雨は朝よりは小降りになっているようにもおもわれた。

河岸段丘の上を走る。左手にサグ川。その奥に、ブルックス山脈が姿をあらわしはじめた
上の写真の少し先。こんどは段丘からサグ川とほぼ同じレベルまで急激にくだる。路面が悪いとき、こういう箇所ではスリップしがち

あとはもうひたすら走る。休憩もとらならい。もっとも、休憩できそうようなところが、まったくない。250マイル先のコールドフットまで、レストランも売店も何もない。そもそも人家がない。あるのはパイプラインの関係施設か、除雪のためとおもわれる基地施設など。道の駅もなく、公衆トイレも、この区間にはほとんどない。

また雨が烈しくなってきた。フロントガラスの雨粒にピントが合ってしまうため、この先の写真はほぼピンぼけ

ひたすら走って、やがてブルックス山脈にさしかかった。分水嶺のアティガン峠へむかって、徐々に詰めてゆく。

昨晩越えたブルックス山脈に、再びさしかかる

ギアをマニュアルモードの二速でゆっくり登り、そして下る。マニュアルモードの設定の仕方は、事前にマニュアルで確かめておいた。

峠に向かう上り坂の途中で、トラックと離合する
高度をあげるにつれて、ガスが濃くなってきた

峠付近は濃いガスにつつまれていた。視界は数メートル。前はほとんど見えない。

峠付近はガスの中。視界は数メートル。写真は白飛びしてしまっている

峠をくだり、やがてガスの下にでた。分水嶺を越えたら天気も異なっているかも、と少しだけ期待していたが、そういうことはまったくなかった。山脈の向こうと同じように、雨と風が吹き荒れているばかりだった。

その31へつづく。

再びコールドフットまで ―― 爆走アラスカ・ダルトン・ハイウェイ1000マイル 31
世界でもっとも過酷な道のひとつ、ダルトン・ハイウェイを走破する旅その31。フェアバンクスから500マイルを走破して到達した、北極海に面した石油掘削のためのキャンプ、プルドーベイ。復路は来た道を南へ向かって走る。アティガン峠......
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