世界でもっとも過酷な道のひとつ、ダルトン・ハイウェイを走破する旅その21。アティガン峠でブルックス山脈を越え、雨のツンドラ帯を走る。路面はよく整備されているが、ダートなので、すぐに泥濘んでしまう。
泥濘み対策の補修工事
雨のなか、平ぺったい土地を北極海へ向かって走ってゆくと、前方にトラックが停止していた。泥濘み対策のための道路補修が始まっているようだった。対応が迅速なのは、やはりパイプライン維持という目的があるためだとおもわれた。
道路の構造は先述のとおり単純なので、補修もシンプルで、ようするに追加の砂利をもってきて、それをローダーで踏み固めるだけ。だからあっというまに補修完了となる。
しばらく待機していると、動きはじめた。
その先でももう一箇所、同じように係員がでて一時通行止めにしていた。
対向車線にバイク
待機中はやることがない。反対車線を通り過ぎてゆく車列をぼんやり眺めていた。バイクが2台ほど混じっていた。いずれもツアラーのようだった。
バイクの性能上ではこれくらいの泥濘みでも問題なく走破できるだろうとおもうのだが、運転している人間のほうはさすがに大変だろうとおもう。かれらにしてみれば、当然予想の範囲内のことなのだろうけれど。
見わたすかぎり、まったいら
路肩にスペースがあったので、ユーコンXLを停めた。あたりは見わたすかぎり、まったいらだ。
気分転換に車外にでたら、ドアをあけた瞬間、蚊が車内に侵入してしまった。あわてて、たたいたり追い出したりする。蚊は、ちょっと勘弁してほしい。
ピックアップトラックに先導される
先導車がやってきた。うしろについて(同じライン取りで)走るように、とのことらしい。作業の関係なのだろうか。
先導車はピックアップトラックである。ピックアップは、ある意味でもっともアメリカらしい車種で、どこででも見かける。荷物も運べるし、作業にもつかえる。
クルマの車種を生態系として見ると、日本における軽トラとだいたい同じ位置づけになる。ただ、多くのアメリカ人の目には、ピックアップはひじょうに格好よく映るらしいので、そこが軽トラとは少し違うかもしれない。
とはいえ、ピックアップの荷台は、基本開放されたまま(ハッチが付いたタイプもある)。季候のよいミシガンのような中西部ならいざしらず、雨や雪の多いアラスカでもピックアップが多くつかわれているというのは、実用面ではどうなのだろう?
デッドホースへ
このあたりがいちばん雨がひどいところだった。その先は、少し雨脚も落ち着き、路面の状態もそこまでぐちゃぐちゃではなくなった。
右手に川があり、その向こうには低い崖地ができている。
それも見えなくなると、こんどは道路際にちらほらとプレハブの簡素な建物があらわれた。遠くに塔のような建造物の姿も見えてきた。デッドホースのようだった。
その22へつづく。