ダルトン・ハイウェイの帰り、チェナ温泉へ入りにいった。アメリカ最北の温泉なのだそうだ。フェアバンクスから森のなかを55マイル走って、現地に到着した。
ロッカールームで水着に着替えた。露天風呂の温泉に向かう扉をあける。そこにあったのは、露天風呂というよりも、温水の屋外プールだった。なお、プールにはカメラを持ち込んでいないので、残念ながら内部の写真はありません。
プールはとにかく広かった。サッカーグランド半面ほどもあるように見えた。プールの側面は水色に塗られていた。雰囲気としては、文字どおり屋外プールだった。
スロープをつたってお湯に入る。下は砂地だった。深さはぼくの肩の下まで。けっこう深い。
水温は、日本の露天風呂の基準からいけば、かなり温い。
真ん中に噴水のようなものがあって、上から水が霧雨状に降ってくる。その霧雨に、白人の男女があたってうれしそうにしていた。
その奥に打たせ湯のようなもの、すなわちお湯が上から降り注いでいる場所があったが、その勢いは尋常ではなかった。白人のおじさんが首の後ろにお湯をあてていた。湯のあたりあたりはまっ赤になっていた。
めがねなしの裸眼なので詳しいようすはわからないが、客の多くは白人で、中年以上の年齢層のようだった。カップルや家族連れが大半。ぼくのようにひとりで来ているというのはいないようだった。
みな水着姿でプールに入り、泳いだり、おしゃべりをしたりしている。子どもたちが水のかけあっこをしたり、飛び込んだりして遊んでいた。岩を組み合わせた露天風呂みたいな区画もあるにはあるが、日本の温泉のように「ゆっくりつかる」という感覚は微塵もなさそうだった。活動的といえばそうかもしれないが、はしゃぎすぎで落ち着きがないようにも感じられた。
チェナ温泉のホームページは以下のとおり。日本語ページもある。
ホームページによれば、ここは最北の源泉掛け流しらしい。日本人観光客も多いようだ。じっさい館内の表示も日本語つきだった。泊まるとすれば一泊$200以上するようだ。
でも、日本式の温泉を想像して来ると、その違いの大きさにおどろいてしまうかもしれない。チェナ温泉は、むしろ夏の豊島園のように、大勢で遊びに来る場所というイメージだった。ゆっくりお湯につかりたければ日本の温泉のほうがずっといいと、個人的にはおもう。
ぼくはここを日帰り温泉がわりに利用したかった。日本であれば各地に日帰り温泉がある。だがアメリカにはそうした施設はまったくない。表でシャワーを浴びるとなると、その設備を探すのにひと苦労である。今回はそれだけのために、フェアバンクスから片道55マイルも走ってやってきたのだ。
温泉プールのほうは、だいたいわかったのでもう結構ですという感じになったので、ロッカールームに引き揚げて、シャワーをあびた。極北アラスカでは夏といえども汗をかくようなことはなかったが、それでも三日ぶりのシャワーはさっぱりして気持ちがよかった。
この項おしまい。