満潮の岩場越えで苦闘 —— 石垣島平久保半島東海岸を歩く 5

石垣島の最北端である平久保崎をめざす徒歩旅その5。前回は、明石の浜を歩き、漂着ゴミの多さにおどろいた話をした。そして、明石の浜の北のはずれまで来ると、砂浜が終わり、岩場があった。

砂浜の白と漂着ゴミ —— 石垣島平久保半島東海岸を歩く 4
石垣島の最北端である平久保崎をめざして徒歩でゆく旅その4。明石の浜を歩く。砂浜はどこまでも白い。その白さは、珊瑚の死骸や貝殻の堆積によるものだという。そして、美しい白い浜に似つかわしくないものの姿も大量に目にした。漂着ゴミである。
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満潮のため岩場を越えてゆくことに

砂浜の北のはずれ。目の前に岩場があり、行く手をはばんでいた。グーグルマップの衛星写真で一を示せば、下のとおり、赤で示した箇所である。

宿のおじさんの話では、岩場の下の砂浜がわずかに露出している部分を伝ってなんとか歩くことができるというようなことだった。しかし、実際にこの場所に到達してみると、その方法はむずかしいようにおもわれた。岩場の下の砂浜に海水が浸入しつつあった。

というのも、このときはちょうど満潮の時刻と重なっていたからだった。より正確にいえば、この日の満潮時刻は0956。岩場に到達したのは0918だった。

左手の崖上に逃げて迂回する手もあるかもしれなかったが、ルートらしき踏み跡は見当たらない。岩場がそれほど険しいようにも見えなかったので、乗り越えてゆくことにした。

隆起珊瑚のギザギザの岩場

岩場に近づいて取りつこうとした。ところが、よく見ると岩は鋭く尖ったギザギザだらけ。『スター・ウォーズ』にでてくるジャバ・ザ・ハットみたいだ。とてもじゃないが、素手で手をかけられそうにない。

火山性ではなく、隆起珊瑚の岩なのではないだろうか。

あいにく軍手もグローブももってきていなかった。注意をしてそっと岩に手をかけて、よじ登った。

岩場の上に立って、ふりかえる。明石の浜が弓なりにつづき、その先にトムル岳が見えた。

満潮で浸入する海水

問題は、これからすすむ先である。岩場はひとつだけではなく、ちょうど手の指をひろげたときのように、いくつもの岩場からできていた。そして、岩場と岩場のあいだのギャップには、挟まれるようにして、ちいさな砂浜があった。そして、このときは満潮ゆえ、その砂浜に海水が浸入しつつあった。

こまったな、どうやって渡ればいいだろう。見ているうちにも水位はどんどんあがってくる。かといって、岩場の付け根のあたりは垂直に切り立っており、とても登れそうにない。エスケープはむずかしそうだった。

そこで、波が引くタイミングにあわせて、露出した砂をつたって、つぎの岩場へとりつくことにした。

初めはうまくいった。しかし、つぎにあらわれたギャップは、見るからに厳しそうだった。ちいさな砂浜の向こうの岩場が切り立っており、足をかけられそうな平らな場所が見当たらなかったのだ。

しかも、波は寄せるたびに深く浸入してくる。

波が引くタイミングで砂浜を渡り、向こうの垂直岩場にともかく手と足をかけて、つぎの波をやりすごすしかなかろう。

向こうの岩場をよく観察し、足をおけそうなくぼみや、手をかけられそうなちいさなでっぱりなどを探した。そして、頭のなかで、それらにどの順番に足や手をおけばいいかをシミュレーションしてみた。

岩場と岩場のギャップを越える

波が引いた。いまだ!

砂浜に足を着く。そしてすぐに向こうの垂直岩場に取りついた。右脚を引き上げきるよりも少しだけ早く、つぎの波がやってきた。それで右脚は少し濡れてしまったが、ともかく垂直岩場に張りつくことはできた。

うまくいった。そうおもった。しかし、それはまちがっていた。

尖った岩で指を切る

気がつくと、左指が痛かった。垂直岩場にとりついたときに、岩をおもったよりも強くつかんでしまったようだった。岩は先述のとおり隆起珊瑚のため険しく尖っている。指を少しばかり切ってしまったのだった。あまり気持ちのいいものではなくて申しわけないのだが、そのときの写真を載せる。

写真でみると血だらけだが、じっさいにはそこまで深い傷ではない。痛みもそれほどなかった。

このとき思い出したのは、沖縄戦末期のことだった。石垣島は直接の戦場にはならなかったと記憶しているが、戦場となった島では、追い詰められた民間人が崖から身を投げて自決した。そのときの記録映像を見たことがある。かれらが身を投げた下にあったのが隆起珊瑚の岩場だったとしたら、どんなことになっただろう。そんなことを考えた。

ぶじ岩場を乗り越える

そのあとも、岩場の上をつたい、またギャップを越えた。何度かくりかえしているうちに、この岩場を乗り越えて、つぎの砂浜に到達した。

ふりかえると、岩場の陰にトムル岳が見えた。距離にすれば、岩場はわずか100mちょっとだっただろう。乗り越えるのに、20分以上かかってしまった。

消毒も兼ねて、傷ついた左指を海水で簡単にあらった。そして、また北に向かって歩きはじめた。

その6につづく。

海辺の放牧牛たち —— 石垣島平久保半島東海岸を歩く 6
石垣島最北端の平久保崎をめざして平久保半島東海岸を歩く旅その6。指を怪我しながらも明石の浜の北の岩場を乗り越えた。その先はまた砂浜がひろがっていた。人影はなく人工物もない。そこは、放牧牛たちの世界だった。
石垣島 2019/01
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さんぽのしっぽ

長谷川 一 明治学院大学 文学部 教授。博士(学際情報学)。専門はメディア論、メディア思想、文化社会学。散歩旅を愛好。メインブログ「散歩の思考」。

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