石垣島の最北端・平久保崎をめざして東海岸づたいに歩く旅その10。前回は、ようやく浦崎までたどり着き、宿のおばさんがもたしてくれたお弁当をいただいた話。お弁当は月桃の葉でくるまれていた。
平久保崎を遠くにながめながら
お弁当をたべたところは、砂浜から少しだけ高くなった岩場の上だった。
潮が引いて浅瀬があらわになった平野のビーチをはさんで、遠くに小山のように見えるのが、平久保崎だ。写真ではわかりにくいかもしれないが、灯台がはっきり見えた。そちらをめざして歩いてゆく。
川が流れ込んでいた。河口から先に岩がならべられていた。堤のようである。
上の写真は、川のようすを撮影したもの。傾斜がゆるいせいか、流れはほとんどない。ただ、これもオフシーズンの乾季ゆえかもしれない。雨の多い季節には、きっと大変な水量になるのだろう。
渚のパラセーリングおじさん
突然、派手な色をしたバカでかい布をかかえたおじさんが、あらわれた。頭にヘルメットをのせ、からだにはベルトをぐるぐる巻きにしている。コスプレ大会でも始まるのかとおもった。
浜にでてくると、その布を拡げた。何事かと、半ばあっけにとられつつ見ていると、やがてそれはパラセーリングの道具なのだとわかった。
おじさんは、ぼくのことを路傍の津波石のように黙殺しつつ、無表情のまま、砂浜の上をこちらに向かって走りだした。
何度か走っているうちに、ふわりと浮いた。
向こうへいったかとおもうと、こちらへ戻ってきた。
なにやっているんだろう? 手慣れたようすは初心者にはおもえない。趣味なのか、近所でパラセーリングのお店でもやっているひとなのだろうか?
おじさんがあらわれたあたりに入り口があった。平野の集落へ向かう入り口だ。
明石からえんえんと歩いてきた砂浜に一時のわかれを告げて、ぼくもこの入り口へ折れた。砂浜から直接には平久保崎にアプローチできないのだ。
ふりかえると、海が見えた。
平野の集落めざして
入ってすぐのところに駐車スペースがあった。軽のバンが停まっていた。さっきのパラセーリングおじさんのクルマらしかった。やっぱり、このあたりのひとなのだろう。
その先たいらな土地がひろがり、畑になっていた。道が直角に曲がっている。その角に、一本の木が、道標のようにしてたっていた。その向こうに、平久保崎の丘が見えた。
ここから少しずつ登り傾斜となる。道路脇の畑には、動物避けの電気柵がしつらえられていた。
黙々と坂を登る。畑の土は赤茶色だ。沖縄の島で見る畑は、たいていこんな色をしている。
坂を登っていった先には、平野の集落があるはずだ。まわりには畑だけでなく、少しずつ人工物が目につくようになってきた。
平野まで、もう一息だ。
その11へつづく。